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おはよう21 2009・7月号

ご近所の人たちと作り上げるあんき流地元福祉』 


地域で生き、地域で死ぬということ

「暁ちゃん、いいサワラが獲れたから、ばあちゃんらに食べさせてあげて」「つくし持ってきたわ。卵とじにでもして」「庭の草が伸びてたから、抜いといたわ」

 入れ替わり、立ち替わり、近所の人たちが顔を出します。ここは中矢暁美さんが代表を務める託老所「あんき」。 松山空港のほど近く、穏やかな瀬戸内の海に面した西垣生地区にあります。昔ながらの漁師町といった風情を残しながらも、会社勤めの息子夫婦たちへの世代交代が進み、最近では新築の家も目立ちます。

 託老所あんきは、築100年の古家を利用してのデイサービスがよく知られていましたが、老朽化が進み、白アリの被害もひどく、平成20年11月、同じ西垣生地区に旧「あんき」のよき雰囲気を引き継ぎつつ、新しく建て替えられました。

 新「あんき」は新築でもあるにかかわらず、新しさと古さが渾然一体と融け合っていて、作り物の匂いがしない、自然な空間が広がっています。割烹着を着た、いかにも地の人といった感じの中矢さんがにこやかに迎えてくれました。

「私は嫁いできたこの地域で死にたいと思っています。しかし、地域の支えがなければ、地域で死ぬることはできないのです。地域の人が、地域の中で、地域の人をみていこうという思いで、私は『あんき』を立ち上げました」。 

 中矢さんはもともと小児科の看護婦でしたが、子育てが落ち着いてからはヘルパーとして働き、その後も授産施設、特別養護老人ホームを経て、愛媛県で最初の託老所を立ち上げました。いろいろな職場を体験し、痛感したことは、「在宅」と「施設」のギャップがあまりにも大きいことでした。施設に入るためには、家族も、生活も、人間関係もすべてを断ち切らねばなりません。お年寄りにとって、そのダメージはとてつもなく大きなものでしょう。関係性を断ち切らずに、地域で暮らし続けるための試みが託老所「あんき」でした。 ・・・・

 おはよう21 2009/07(中央法規出版発行)より抜粋



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